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2024年の第96回選抜大会から、高校野球では新しい基準の金属製バットが使われています。中継で「新基準バット」「低反発バット」という言葉を聞いて、何が変わったのか気になった人もいるかもしれません。
この記事では、日本高等学校野球連盟(日本高野連)の公式サイトに掲載されている「金属製バットはなぜ変わったのか」(2024年3月29日)と、「金属製バットの日常点検と取り扱い」の資料だけをもとに、新基準バットの中身と、使う前の点検のポイントをまとめました。
新基準バットで変わったこと
2つの大きな変更点
日本高野連の記事では、大きな変更点として次の2点が挙げられています。
| 項目 | 従来(「N」マーク) | 新基準(「R」マーク) |
|---|---|---|
| バットの最大直径 | 67mm未満 | 64mm未満 |
| 打球部の肉厚 | 約3mm | 約4mm |
| 重さ | 900g以上 | 900g以上(従来と同じ) |
最大直径は、従来は公認野球規則に記載されていた規定を改正したものです。社会人野球は2002年に木製バットに切り替えていたため、今回は日本高野連独自の「金属製バットの新基準」として定めた、とされています。肉厚については、SG基準に新しく反発性能規定が盛り込まれ、打球部の圧縮試験を導入し、適合するには厚さ4mm程度が必要になった、と説明されています。
実験で分かった変化
日本高野連の記事では、より細く、打球部の厚みが増したことで、日本高野連の実験では打球初速が約3.6%減少し、反発性能も5%から9%落ちた、とされています。
「R」マークの意味
新しい基準を満たしたバットには、従来の「N」に代わって「R」のマークが表示されます。日本高野連の点検資料では、Nは「ニュースタンダード」の略、Rは「リパルション(反発)」の略とされています。高校野球では、SGマークと「R」マークが入った金属製バットを使うようになった、と記事に書かれています。
なぜ新基準バットになったのか
きっかけ
日本高野連の記事によると、2019年に「投手の障害予防に関する有識者会議」が開かれ、投球数の制限などを議論した席で、金属製バットが飛び過ぎるので是正する必要があるのではないかという意見が出ました。筋力トレーニングについての研究なども進み、高校野球でも選手のパワーが向上して、再び「打高投低」の傾向が強まっていた、とされています。
また、同じ年の夏の全国選手権大会では、投手が打球を顔面に受けて頬骨を骨折する事故が発生し、練習試合で打球が当たった投手が亡くなる事故もあった、と書かれています。
目指したこと
これらを機に、日本高野連は製品安全協会とも連携しながら、新たな対応策の協議を始めました。目指したのは次の2点です。
| 目指したこと |
|---|
| 打球による負傷事故の防止(特に投手) |
| 投手の負担軽減によるケガ防止 |
そのために、金属製バットをより木製バットに近づけられるよう、2022年に日本高野連独自の規定を定めるとともに、SG基準も改正された、とされています。そして2年間の猶予期間を経て、2024年の選抜大会から新基準のバットが使われるようになりました。
日本高野連の願い
記事の最後では、金属製バットの基準が何度も改正されてきた根底には、選手たちに安心して野球を楽しんでほしいという思いが流れていて、それが日本高野連の願いであり、そのための環境づくりが使命だと考えている、と結ばれています。
新基準バットの配布
日本高野連の記事では、新基準バットへの買い換えは新たな経済的負担となることから、2023年秋以降、希望した加盟校3814校に新基準のバットを3本ずつ配布した、とされています。単純に計算すると、3814校×3本で1万1442本です。この配布は、主催する朝日新聞社、毎日新聞社とともに記念事業の一環として実施した、と書かれています。
金属製バットの歩み
導入は1974年
日本高野連の記事によると、高校野球で金属製バットが導入されたのは1974年です。当時は木製バットしかなく、需要の増加に材料不足が加わり、折れやすいバットで加盟校の経費負担が増えるという課題があった、とされています。導入にあたって、日本高野連は米国で実績のある2社の金属製バット3600本を一括購入し、各校に2本ずつ配布した、と書かれています。
きっかけはハワイからの打診
記事によると、日本の高校野球関係者が金属製バットと初めて出会ったのは、1973年6月です。20年来、親善試合を行っていたハワイの高校野球チーム側から、「アルミ製の金属製バットを使用してもよいか」という打診がありました。素材は軽量のアルミで強度があり、米国では2年前から高校・大学で使用している、ということでした。
日本高野連の審判規則委員会や常任理事会では、「金属と木製では反発力が異なるため時期尚早」「基準を策定してから導入すべき」といった慎重な意見が多数だったとされています。それでも当時の佐伯達夫会長が、限られた部費で活動する高校野球の経費の問題から導入を提案し、1974年3月の常任理事会で導入を機関決定した、と書かれています。
S基準とSGマーク
記事によると、導入翌年の1975年、金属製バットは消費生活用製品安全法の特定製品に指定され、定められた基準(S基準)を満たしていないものは国内で製造、販売ができなくなりました。基準では、ボールが当たる「打球部」からダンベル型と呼ばれる試験片を切り取って引っ張った際の伸び率や破断の状況について規定した、とされています。素材が堅すぎると割れて破片が飛び散り、けがをする恐れがある一方、柔らかすぎても耐久性がない、という考え方です。
トランポリン効果と基準の見直し
記事では、1984年ごろには打球部の肉厚を薄くしたバットが出てきた、とされています。ボールが当たってバットがへこみ、元に戻ろうとする力でボールがはじき返される現象は「トランポリン効果」と呼ばれ、へこみが大きいほど飛ぶ力も大きくなる、と説明されています。肉厚を薄くすればへこみが大きくなって飛距離が伸びる一方で、割れやすくもなり、安全性や経済的負担の面で問題があったため、1986年にSG基準が見直されました。
新基準バットで打球部の肉厚が約3mmから約4mmになったのは、この「へこみ」による反発を抑える方向の変更だと読むことができます。記事でも、SG基準に新しく反発性能規定が盛り込まれた、とされています。
打球音への対策
記事によると、金属製バットは元来、木製に比べて打球音が高いのが特徴で、当初は打球部の内部にウレタンが詰めてありました。しかし、軽くするためにウレタンを抜いた製品が出てきて、甲高い打撃音による選手や審判の聴力障害が指摘されるようになりました。日本高野連は専門家に依頼して調査を実施し、その結果を受けて1990年にSG基準に音響対策の基準値が追加された、とされています。
「N」マークの規定
記事では、牧野直隆会長が「金属製バットを魔法の杖にしてはいけない」と、木製バットに近づけるよう打撃性能の抑制に取り組んだ、と紹介されています。1999年にまとめたアマチュア野球団体独自の規定では、最大径67mm未満、質量900g以上、形状はなだらかな傾斜であること、などが定められました。この規定を満たしたバットに「N」のマークが表示され、2001年秋から使われるようになった、とされています。
基準の移り変わり
| 年 | 日本高野連の記事に書かれている出来事 |
|---|---|
| 1974年 | 金属製バットの導入を決定 |
| 1975年 | 消費生活用製品安全法の特定製品に指定(S基準) |
| 1983年 | 特定製品指定から除外され、自主基準のSG基準に変更 |
| 1986年 | SG基準を見直し、グリップやテーパ部の強度試験を追加 |
| 1990年 | SG基準に音響対策の基準値を追加 |
| 2001年 | SGマークに加え「N」マークのバットを使用 |
| 2024年 | SGマークと「R」マークのバットを使用 |
記事では、高校野球ではSGマークのついた金属製バットしか使用できない、とも書かれています。
新基準バットの日常点検
日本高野連の「金属製バットの日常点検と取り扱い」では、金属製バットにもそれなりの寿命があり、使用回数に比例して金属が疲労し、ヒビ割れや表面のしわ、へこみなどの変化が現れてくる、とされています。危険な折損事故を未然に防止するため、各チームで使用前の点検をすることが大切だ、と書かれています。資料の6つの項目を見ていきます。
1. 点検の方法
点検は、目視と触感で、へこみやヒビ割れが生じていないかを確かめます。打球部だけでなく、先端、テーパ部(バットが徐々に細くなっている部分)、グリップ部など全般にわたって注意する、とされています。
なお、2022年に定めた新基準バットは打球部を肉厚に設計しているため、打球部付近の変形により、先端部に取り付けてあるキャップやバット本体の先端部付近に変化が現れる可能性があるので、特に留意すること、と書かれています。
2. 記録の保存
金属製バットの品名・品番、購入年月、購入先、実際の使用開始日などを記録し、保管します。
3. 点検の励行
金属製バット点検担当者を定め、毎日、練習前にその日使用するバット全部を点検して、異常の有無を指導者に報告させる、とされています。
4. SGマークの点検
SGマークがきちんと付いているかを確認します。
5. 新基準品の識別
従来は、グリップ部上部の製造年月のアルファベットに続いて「N」が表示されていましたが、新基準品は「R」を表示しているので確認してください、とされています。
| 区分 | 資料に載っている表示の例 | 意味 |
|---|---|---|
| 旧基準品 | BB.JA-N | 22年1月 |
| 新基準品 | BC.JB-R | 23年2月 |
アルファベットの記号は、Aが1で、Bが2と順に表記する、とされています。つまり「BB」は2と2で22年、「JA」の「A」は1で1月、と読めます。
6. 事故品の届け出
いわゆる寿命による疲労ではなく、新しいもので不審な折損やヒビ割れ、変形の生じたバットがあった場合は、破損した箇所を保存したうえで、各都道府県連盟を通じて日本高等学校野球連盟に届け出る、とされています。
新基準バットのよくある質問
新基準バットはいつから?
日本高野連の記事では、2年間の猶予期間を経て、2024年の選抜大会から、SGマークと「R」マークが入った金属製バットを使うようになった、とされています。
重さは変わった?
日本高野連の記事では、重さは従来と同じ900g以上のままとされています。
見分け方は?
グリップ部上部の製造年月のアルファベットに続く表示が、従来品は「N」、新基準品は「R」です。
新基準バットを知って高校野球を見よう
新基準バットは、最大直径が64mm未満、打球部の肉厚が約4mmになり、「R」マークで見分けられます。日本高野連は、打球による負傷事故の防止と投手の負担軽減を目指して基準を変えた、と説明しています。中継や球場で観戦するときは、打球の飛び方にも注目してみてください。